今朝のNHK新日曜美術館は『林忠彦』特集(夕方再放送あり)

彷徨える路傍より抜粋


写真家の林忠彦って知ってる?>
NHKが放送する新日曜美術館という番組は結構好きでその前の日曜美術館からそれなりに拝聴させていただいていますが、内容の殆どが絵画や彫刻、現代アートに伝統美術(日本画含む等々)で『写真』をメインに取り上げる回は滅多にないため最近はあまり気にも止めていませんでした。

ただ今朝は偶然やや遅い朝食との時間的タイミングが合った事から久々にチャンネルを合わせると今は亡き著名写真家の『林忠彦』特集が組まれていました。個人的な思い出としては以前写真館で働いていた当時、地元茨城県の水戸市で開催された写真商組合主催のカメラショーなる行事に特別ゲストとして林氏が招かれ、私の店が入るブースのすぐ横をお弟子さんなり数人で通り過ぎる光景を間近で目撃できた経験でしょうか。

その風貌は全体が黒づくめで引きづるが如き使い込んで年季の入ったロングの皮コートをなびかせていた印象が記憶にあります。すぐ横につくお弟子さんもそれ相応にお年がいっており兎に角お二人とも『渋い』の一言に尽きます。見た目はかのジャズミュージシャンで有名トランペッターのマイルスデイビスを思わせる圧倒的存在感がありました。

相当以前からかなり気になっていた写真家で特に彼が名を馳せたのが当時の著名文化人の肖像写真でしょうか。番組でもその辺が多く紹介されていて時の伝説的小説家の太宰治、川端康成、織田作之助、坂口安吾など錚々たる人物の生々しい姿を見事に記録された実績は皆さんも周知の事と思います。


知らず識らず学んでいたような>
私自身も当時スタジオカメラマンを担当していた頃にそこへよく遊びに来られたお客さん(写真同好会の面々)をモデルにして実験フォトを盛んにやっていた事を思い出します。モノクロフィルムで撮った写真を自ら現像プリントして店頭に飾らしてもらいそれがまた宣伝にも繋がったでしょうか。それなりの腕も磨かせていただき仲間には今も感謝しています。

それもこれも『林忠彦』氏の影響が大きかった事は確かです。あの頃のカメラ雑誌のグラビアに毎月登場する作家の一人が彼であった事、意表をつく演出や場の設定また特異なライティング手法が私の目を惹きつけました。日頃私もスタジオ専従なので印刷物を見てそれがどう写されているのかライティング技法などは即座に見抜けましたし、何故そうするのかの狙いも見えていました。何はともあれ捉えるその人物を知る事が先決ですし弾む会話の中から『その一瞬』とやらを捕まえる仕事、直に会わずとも大変見習うべき要素がそこにはありました。

晩年『東海道』の取材を始めた訳ですがすでに重い病気を患っていて余命5年という状況でも弱音一つ吐かず精力的な取材活動は続きその完成は何と死の3ヶ月前と聞きました。本人としてはまだまだやりたい事はあったでしょうに享年72歳という余りに早すぎる死でした。


引き算あって足し算で残す>
確かに育った時期が戦時中とあって過酷な状況が相まって精神的にも健康維持的にも相当にご苦労されたでしょうし時に酒に明け暮れる事もあったに違いありません。しかしそんな時代だったからこそ残せた貴重な記録があります。番組は後半にその辺もつぶさに追っていて、焼け野原から這い上がろうとする人々の懸命な姿を彼は克明にまたリアルに活写し戦後東京の生々しさを記録し続けていました。

人を撮っても街の姿を捉えても彼の視線の先には絶えず多くの情報量を記録するという使命があったように感じます。ファインダーを覗けばそこにこそ彼の真骨頂があり決して褪せない忘れがたきあの頃嗅いだ『時代の匂い』というものが強くしみ出てくるのでしょう。私はそんな彼の表現主義志向がとても好きでした。敢えて確信犯的に狙っている訳ではありませんが不思議な事に無意識ながら今私が写す写真が比較的そんなニュアンスを含んでいる事です。


ストックフォトに活かせないかな>
もちろん撮影現場は林氏と比べれば雲泥の差であり何かの縁で仮に発表出来たとしても特に世間を賑わすテーマもありませんが、一般に思う常識的なストックフォトでラインナップされるビジュアル素材とは一線を画す特別な感じもしています。素材として売れにくく人気薄なのはそれが原因と言えなくもありませんが、面白いものでそうと理解しつつもやはり毎回同じような視点で捉えている自分が居ます。

時たまですがそれでも忘れた頃ポツポツと売れてます。内容はまちまちで捉えどころはその都度利用者に直接聞かないと何とも言えませんが当然目的如何を前提にセレクトの段階でそこに惹かれる必要なムードとか要素なりが出ていたんでしょうね。そうは言ってもかつての林氏のようにいっぱい稼げる恵まれた写真家と片や明日がままならない貧乏ストックフォト屋、なんか悔しいですけど。



教訓:先ずはそこそこ有名大学に進学して専門学科を専攻、出版社繋がりの会社に就職して修行と同時に人脈を拡大、自分なりの大きなテーマを以って精力的に活動、コネを使って売り込み、運をものにする、ある日人生が180度変わる。いや、その前にやっぱり重要なのは『聞き上手お話上手』である事でしょうか、世間を見渡せばそこにも天才(時の人)たる所以(ゆえん)があると思えます。

→DEGIGA.JPサイトで扱うタイトル『彷徨える路傍』(上掲画像)ですが、こちらは写真集感覚で眺めても十分楽しめます。


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