
ストックフォト素材と聞けば今更ながら当然ですが、そこは使用するにあたっての目的に符合するとか利便性が求められてしかるべきものです。特に広告利用に際して各企業が世に送り出す商品をより魅力的に伝えるためにどれだけ効果が発揮できるかがストックフォト素材のセレクトの最も肝の部分ではないでしょうか。
私ごとで恐縮ですが、私の現在進行中のものも含め過去のこれまでの作品群を振り返るにつけ言葉とは裏腹に以外なほどその肝を外している素材が目立ちます。本人はいたって『広告的』と思ってその被写体にレンズを向けシャッターを切っているつもりな訳ですが、見る人が見れば「これは違うだろう」と一蹴されるに違いありません。
預け入れる代理店の担当者さんは経験上流石に目が肥えているのでセレクト時の『売れる売れない』に関しての一線はしっかり持っています。会社のそれぞれの方針もあるとは思いますが、預かり量は各代理店さんによってまちまちであり、またその内容も相当にズレが出てきます。
過去に預け入れした作品について後に各社を見比べれば、ある代理店で盛んに売れている作品だったとして反面その素材を預からなかった代理店の担当者のセレクトは失敗だったのか?と恨み節にも似た悔しさはありつつ、それでは仮にそこで預かったら確実にお客が付いたかはなんとも言えません。そもそも客層が違うからです。
しかしながら超安売り代理店が圧倒するこんなご時世ですからいちいち細かな事に拘ってセレクト作業するくらいなら、よっぽどのダメ画像以外は全部預かってこの際全てお客さんに委ねちゃってもいいのではないか、むしろその方が各方面の業界関連が集まり易く、思わぬ使い道の創出から売上アップおよびユーザーの引き止め役に有利なのではと、ふとそう思う訳です。
ましてや4Kオーバーの動画を扱うまでになって今や各社が抱えるサーバー機器の容量は桁違いであり、高が一点数MB程度の静止画などが数億点あっても大した負担にはならない筈なのです。もっと柔軟にまたそこから新たな方向性も見えて来るのではと感じますし、合わせてここしばらくの問題である売れる作家(会社組織)とそうでない貧乏作家(主に個人)の格差の解消にも貢献しそうです。
話は変わりますが皆さんは今、巷の消費環境をどうお感じになっていますか。需要と供給の関係に何か不自然さはないでしょうか。先の『格差』で言えば兎に角頻繁に物が買えて有料の多くのサービスを享受でき、毎月の借金返済にも特に困らない安定した暮らしが営める国民人口って結構少ない世の中になったと私は率直にそう思います。
昨日までそれこそ裕福三昧だった人が何かを切っ掛けに突然仕事を追われるとか、元々若い頃から自由気ままに生きてきた人がバブル崩壊を皮切りに四半世紀続くデフレ社会に翻弄されながら徐々に衰弱し生活に瀕するなんてここ数年当たり前に聞く話です。つまりお金を生んでくれる筈の消費者の居ない消費循環の極めて悪い社会がいよいよ顕著になっているのです。
物を作って宣伝しても買ってくれる人が少数では量産できず価格も高騰しターゲットは殆どがお金持ち、そのお金持ちだって自身の事業収益が競争激化と相まって不振に陥ればいずれは体力も資金も目減りしていきます。労働人口の減少と対極にある急速な老人増加に伴う度を越す国税負担は勿論数年先には若年層に多大な犠牲を強いる事は避けられない状況でしょう。
このところの通販番組を見るにつけ得体の知れない怪しい商品を売りつける業者が目に余ります。内容から主に老人から搾取する手口が見て取れますし有名どころについても一見料金を安く見せつつも『抱き合わせ販売』をメインに売りさばく手法にそれこそ呆れ返っています。法律に抵触しないギリギリで如何に金を集めるか、心理としてそれ一点が世の中に蔓延しているからでしょうか後に摘発される詐欺まがい商法は後を絶ちません。
ストックフォト業界についても然り、あのマイクロストック関連が行う低価格販売方式の新ビジネスはそんな荒んだ世の中にあって生まれ出てきたとも言えます。いつしか健全な労働力へのそれ相応の対価還元が滞り、ずる賢い組織にばかり金が集まる仕組みを政府官僚並びに各業界トップが一丸となってそういった輩と手を切り真摯にこの先の日本を見据え何とかして欲しいものです。
本日の『これは使える!〜』は氷点下の寒い早朝にエンジンを温める自動車から立ち上る排気ガスを撮影した一枚です。タイトル『面影・追憶の果て』より抜粋しました。冬場の生活感がにじむこちらなどは広い意味で何かの目的に絶対使える筈なのです。求められていないのではなく今世間にそもそも使い道が生まれて来ない事にこそ問題があると思っています。
→DEGIGA.JPサイトでタイトル『面影・追憶の果て』をチェックする。80〜90年代初頭であれば高い値段で確実に売れていました。それは単にバブリーでお金が有り余っていたからではなくそこに真に需要があったのです。そして利用者はその広告ないしは書籍利用でしっかり稼げていたとも言えます。当時は心も懐も柔軟であり果てなき夢も描けた時代。また再び国民みんなで『夢と希望に溢れる豊かさ』を共感しあえる世の中が訪れて欲しいそう願って止みません。



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