
『インスタ映え』なんて言葉が流行って今年の流行語大賞ベスト30にノミネートされました。それだけに今の若者特に女性とSNSの関わり合いの盛んさを示していると言えるのでしょう。当ブログでもSNS関連についてここしばらく頻繁に取り上げているので既にご存知かと思いますが私も勿論それなりに若者に混じってインスタグラム投稿を楽しんでいる口の一人です。
投稿の度に『いいね』をくれる人、思わずフォロワーになってくれた人たちのほぼ全員をフォローするようにしてより広いコミュニティーを形成推進している訳ですが、とにかくその都度お礼といいますかその方たちのプロフィールページに赴いてそこで気になる画像に多い時で数点まとめて同様『いいね』を入れています。
中にはそこそこプロ級の方、いや完全プロもいるようなのですが、まず自分が『いいな』と思える画像(動画含む)のハートマークにためらう事なくチェックを入れます。何気に上から目線で審査員気分を味わっている面もあるでしょうか。そんなソーシャルメディアで最近注目を集めているのが『スナップマート』などインスタ写真を主とするストックフォト販売サイトです。
そこについては紹介も兼ねて以前に話題にした回がありますが、何と今ではInstagramに投稿された画像を商売に使おうとするストック会社の参入もさることながら大手老舗でもそんな画像を集めだし販売に繋げる動きが出てきているようです。上述の私がチェックする画像の殆どは多分ですがストックフォトで十分機能するであろうと推測できます。そのくらいいい感覚でムードを捉えているので、いや既にストックフォト販売に参加しているかも知れませんが、さて実際はどうなんでしょうか。
紙媒体が廃れたと言われて久しい訳ですが、ここに来てその販売価格は益々低料金化して来ている事は皆さんもご承知と思われます。いわゆるアナログ装置を介する印刷環境が盛んであった頃のストックフォト素材の価格はかなり高額で取引もされていた訳です。今もその価格帯に余り変動は見られませんでおおよそ¥30,000辺りが相場かと思います。
光デジタル通信の更なる進化によって2008年前後に突如登場して来たマイクロストックの台頭とその後の不景気(デフレ)と震災等々の影響が重なった事から所謂その素材そのものの持つ価値基準が一気に低下し、またそれによってある種の垣根が取り除かれ高級機を片手にプロに憧れを抱くアマチュア作家の怒涛のような参入が遂には業界に異常なほどの価格下落を招く事になりました。
代理店の中にはどこぞの寄付を募ったりアフィリエイト集客目的で画像を全て無料配布する輩も現れるなど、まともな運営など悉く不可能な状況と言っていいでしょう。これも新たな時代に即したビジネスモデルと言ってしまえばそれまでですが、大概はしばらくして消えていく運命の商法が殆どであり去ったあと残るのは惨めな残骸のみ、一旦下がった価値観が元の鞘(さや)に戻る事はありません。
そういった現状を踏まえながらもただ少し腑に落ちない面はあります。上掲画像の文章にもしたためましたが、同じ質量で仕上げられた高精度の画像があったとしてそれが使われる(買われる)媒体によっての価格差が尋常でないという事です。確かに不景気でどの企業も疲弊していた当時ならそれも仕方なかった訳ですが、最近は株価も23,000円越えと好調でGDPの直近の数値も良好、外需企業の利益率の向上や設備投資も盛ん、新卒内定率97%超というニュースが頻繁に流れる中そこに倣ってそろそろストックフォト素材も価格設定を改めてもいい時期ではないのかと思う訳です。
まずはストックフォト素材を使う企業がそこを自覚すべきと思いますが、よく聞くところにウェブ業界は恒常的に予算が少ないので安くしてくれないと困るのだそうです。本当にそうでしょうか。景気を巻き返しつつある大企業はもちろんの事繁栄の途にあって様々なECサイトがぼろ儲けしている昨今に於いて下請けの制作会社に払える予算がないなどとは到底思えません。都合いい底値条件をただ意地悪く固定しているに過ぎないであろうと想像します。
特に大企業が運営しているサイト構築にどれだけの予算が投入されているかといえばそれは上記繁栄時の紙媒体を超えるほどの予算配分に他なりません。つまりウェブ広告戦略への大掛かりな投資はもはや当たり前になったと言い切れます。広告費はそりゃあ安いに越した事はありませんが掛けるべき場所にはしっかり予算を組み入れる事が健全な方向であり紙媒体の頃は皆そうしていた筈なのです。
素材の制作者側から言わせて貰えば一つに「作るエネルギーは高くも安くも同じである」という事です。素材一つが単に業界やサイズの大小で価格差がとてつもなく拡大するというのは果たして真面といえるでしょうか。関係する全ての業界はその辺の意味のない負のしがらみを率先しいち早く取り除き健全な利用形態へと方向転換するべきと切望する次第です。
でないと優れた神業を発揮している数少ない貴重な職人が急速に減少し持て囃される人とそうでない人との格差がより進んでただ単一的な物ばかりが増え新鮮かつ幅広く個性的な素材が生まれにくくなってしまいます。制作者も一人の消費者であり生活力もそこそこ持ちうる力をふんだんに発揮して多少なりとも世の中を回している訳です。仮に私の場合を以下の例に挙げるならちょっと生意気な言い方になるかも知れませんがお許しください。
従業員が200〜300人の私のよく知る会社で上掲画像(グローバルイメージ)を作れる人物が何人いると思いますか?およそ人口50,000人の地元自治体の住民の中にこれを描ける人もしくは商売にしている人は何人いると思いますか?あくまでこれまで携わった私の経験値ですが、前者は0人、後者でも私を入れてたったの3人です。そのくらいに貴重な存在なんです。
普通に風景を写したり知人のかわい子ちゃんを撮って預ければそれでもそこそこ稼げる人はいると思いますがそんな方の多くはマイクロストックに預けてしまっています。もしも大手老舗ストックであればほぼ却下される画像であってもマイクロならばそれなりの数で預かってくれます。代理店にしてみればその人の作品が売れようが売れまいがどうなろうが全体のパイが大きければそれ良しでいいも悪いも社会貢献の礎とは裏腹に会社(経営者)が儲ける事が善であり全てなのです。
最低最悪のギャランティーで優れた作家が育つ訳がありません。



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