
先日、地下の変電所が火災に見舞われ東京都の比較的広い地域で停電事故が起こりました。57万戸余りが被害を被った訳ですが、変電所一か所でこのレベルですから、これが地球規模で起こった場合はどうなってしまうのでしょうか。偶然ですが、この『THE DOWN』を書こうと構想していた矢先の出来事だったので、益々その危機感を募らせています。
絶対に起こらないとは言い切れない現象の一つに、 地球を照らし続けて遥か45億年以上経つあの命の源である太陽ですが、時にコロナの一部が膨張して起こるエネルギーの放出が起因して突如発生する『スーパーフレア』というものがあります。過去にそれはある間隔を置いて何度も起こりその都度膨大な電磁波(パルス)が地球に降り注いだと言われています。
156年前に地球を襲ったキャリントン・イベントは有名ですが、当時は電気需要が殆どない時代だったため事なきを得ました。直近では去る1989年3月にカナダのケベック州に於いて突如大停電が発生。その後のNASAの調査で太陽フレアが原因である現象と結論付けられました。当時の破壊的レベルを既存のエネルギーに例えると原爆数千発を一度機に爆発させた威力に匹敵、磁力が10億トンにも及ぶガス雲を放出したほどの恐るべきパワーだったようです。
スーパーフレアは別の言い方で『太陽嵐』とも呼ばれます。高速で地球に急接近するガス状物質という形態からもまさに『嵐』と言われる所以なのでしょう。さて皆さん、もしもこんなバカ超大スケールのスーパーフレアが今や高度文明に溢れるこの地球に向かって放出されたとしたら果たしてどんな運命が私たち人類を待ち受けているのでしょうか。
もはやお話しする必要もないだろうとは思いましたが、一応想像(妄想)してみたい気持ちもあって今回敢えて書いてみました。そんなシミュレーション劇です。
ある日、アメリカの宇宙監視機関が太陽の黒点の一つが以上な大きさに発達している事に気づきます。すぐさま巨大なフレア発生の確率及び時期、規模、防災に関する報告がホワイトハウスに伝達されました。しばらくして予想通り超巨大スーパーフレアが地球に向いた形で大量かつ高速で放たれます。到達時間はなんと僅か12時間以内と分析。電磁波自体は爆発からたったの8分で地球に到達する事から早期に通信障害が発生し始めます。その情報はアメリカ国内に止まらず世界全土へと通達されます。
さてそこでそれを聞いた日本での体制がどうなるかです。どの国もそうですが、いきなり全電源を止めて経済活動を完全にストップさせる事など残り時間的にも到底不可能であろうと推測されます。知ってか知らずかこれまでの日本政府の対応を振り返れば損害の規模をまずはおおよそ低く見積もる傾向があります。そこには一部死守すべき利権と既得権益が常に関わっています。なので送電機能の殆どがそのまま放置される可能性は大です。

そして遂に強力なフレア(電磁波)の第1波が日本に降り注ぎます。まず全国に無数に立つ電柱に設置されている変圧器やその周辺機器のほぼすべてが一瞬にして破損します。高電圧の場所では火花が散るなどして電線が燃えて火災が発生、隣接する民家に燃え移り棟続きの地域は甚大な延焼に拡大していきます。送電が止まるので全国津々浦々で想像を超える大停電が起こり復旧の見込みは皆無。ここ20〜30年以前に開発された自動車は電気で回路が制御される構造になっているので、これまた殆どでエンジンがかかりません。
同様に航空機、船舶、鉄路などあらゆる交通機関が使用不能となります。ダムや火力でタービンをいくら回しても回路故障で電力は発生しないのです。そして最初の夜を迎えます。
※墜落事故や座礁、遠隔地帯での孤立、エレベータ封じ込め、サーバー施設の故障でデータ消失等々ありとあらゆる電子機器が影響を受けます。
コンビニや街のスーパー、自販機、大型デパートに至るすべての飲食に関わる現場は大混乱。お金を払うにもレジがストップで手作業になり、それどころ途中から得体の知れぬ輩グループが乱入するや否や派手な窃盗があちこちであたかも合法の如く繰り広げられる事になります。シャッターを閉めていても彼らは容赦なく破壊し食品や飲料水などすべてを持ち去っていきます。つまり大規模な暴徒化です。
こうなると範囲が広すぎて政府機関は手の施しようがなくなります。連絡が取れず警察官の統制もままならず自衛隊すら窃盗に加わっているかも知れません。そのような状況に陥った国で果たして全国規模での『戒厳令』が敷けるのか不確かです。
真夏や真冬など極度な気候の中であれば国民は更にパニックになります。電気が来ないので冷房も暖房も出来ませんし常温下では缶詰以外買い置きの食料は傷みも早く各家庭はそうそうに食料難にあえぎます。電気で組み上げる水道もストップ、井戸水もポンプ汲み上げ型は作動しません。都心部を流れる川の水など飲める筈もなく、そんな行き場を失った地域住民の多くで餓死や水分不足での死者が急増していくと思われます。
稀に見る歴史的なスーパーフレアがその後も断続的に世界各国に容赦なく浴びせられます。古びた内燃機関をはじめマッチや100円ライターなど単純な点火装置、携帯ガスボンベ、LPガスなどその燃料を使い切るまではどうにか凌げますが、中身が無くなればそれで終わりです。自動車もガソリンスタンドでの給油は電気が来ないので給油機自体が作動しません。無理に組み上げようとすれば爆発火災の恐れも出てくるでしょう。
※一般に手動式に切り替えは可能
消防車も救急車もパトカーも物資の輸送トラックも一切使えなくなり病人やけが人の搬送はもちろん、病院側は機器の故障で適切な手が打てず重篤な入院患者の生命が危ぶまれます。

変電所を含む主要な送電設備が復旧しない限りこの最悪の状態は続きます。手回しラジオも放送局が機能しなければ意味がありませんし、携帯電話スマホに至ってはアンテナ拠点の故障ですべて使えず発令されるべき各種防災情報が伝えられないのです。身内の安否も避難所への誘導も何もかもがダウン。孤立というか、以前の村社会的な極めて狭い範囲内でしか情報は共有されない事になります。
これまで人類にもたらされてきた電力という素晴らしい恩恵がむしろ仇になったと言えます。最後にもう一つ。原発はどうなってしまうのでしょうか。電源喪失で冷却装置は働かず炉内の温度は急上昇し世界中にある431基(2010年調べ/日本54基=世界第3位)の原発基地すべてでメルトダウンが起こります。地球上の大気はことごとく汚染されごく短期間で生き物の住める場所は完全に失われます。もはや「地震だ津波だ」などという局地的(近隣国への影響含む)なレベルでは済まされません。
結論: 人類は唯一火を扱えた事で進化発展し、その火の力を失って滅びゆく。いつか訪れるであろうその日が少しでも先である事を祈るしかありません。
これがハリウッド映画だと毎度お決まりの最後の最後自然が繰り出す壮大な現象か、はたまた何とかいい手が見つかって幾万かの人々が生き伸び希望を残す形でラストを迎えるのでしょうね。
おことわり:本投稿は映画の予告編ではありません。
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