
先週エキサイトニュースを見ておりましたら北海道美瑛町の観光名所の一つ『哲学の木』が敷地所有者自らの手によって切り倒されたという記事を目にしました。ここ何度か訪れて眺めた風光明媚な光景が残念ながら姿を消してしまったという訳です。
切り倒した当の本人(農家の方)がその理由をいくつか挙げていたようなのですが、一つはすでに相当な年月を経て木そのものが年老いておりもしもの事故も想定されるがゆえに、近いうちに伐採しようと考えていたこと。そして実は次が本当の理由なのですが、ここを訪れる多くの観光客、特に外国人の方たちによる畑敷地内への無断侵入行為による農作物の被害が尋常じゃなくなったのだとか。
もちろんアマチュアカメラマンの容赦ないモラル違反も多く見受けられることから近年はボランティアの方達による周辺警備も頻繁に行われていたようです。しかしながら年がら年中木の周りにしがみついている訳にもいかず、また哲学の木以外にも監視対象は幾つもあるので、正直追いつかないというのが現状だったようです。
私も一昨年の夏美瑛の取材で哲学の木に立ち寄った際、ちょうど居合わせた年配数人のアマチュアアカメラマングループの何人かが敷地内に入り込んで悪びれた様子もなく平然と撮影していました。そこへ案の定上述の警備員が通りかかりすかさず注意したのですが、そのカメラマン達がなんと返したかというと「ここの車止めをもっと道に出しときなさいよ、でないとどこまで入っていいのか分かりずらいし、そもそも私達観光客が来るからお金稼げてるんじゃないの」とのたまっており、反省どころか上から目線的な高圧な態度で放つその言葉に私も思わず唖然としてしまいました。
当の監視員も喧嘩する訳にもいかず苦笑していました。驚きです。大体木の根元付近まで数十メートルも入っておきながら分かりずらいなんてよく言えたものです。本人達もその後居づらくなったのか撮影を早々に終えていそいそと引き上げていきました。
もうしばらく前になりますが、確か1991年だったか、当時気の合う写真好きの友人と二人でこの場所を訪れたことがありましたが、あの頃は歩いて畑を突っ切ろうが直に車が入り込んでも特に叱られることはなく、それがごく自然で普通でした。一昨年の実体験としては、時代も様変わりしやはりルールが相当厳格化しているなという印象を持ちます。何しろそこら中に『敷地に入るな』『ここは私有地です』『伝染病予防のため立ち入り禁止』等々の文言の立て札をやたら見かけました。
昨年でしたか、著作権保護訴訟で素材の大手販売代理店のアマナイメージズさんが無断使用を繰り返していた弁護士事務所を相手取り起こしていた裁判で見事勝利したようですが、そういう意味での小競り合いがあちこちで頻繁になる中に於いて、商売としての既得権益を声高に叫んでみるもまだまだその辺の庶民の認知度理解度は残念ながら道半ばという感じがします。
画像や動画コンテンツの多くは光回線であればインターネットで簡単にダウンロードできる環境な訳なので制作者(相手)の権利は軽視しがちになります。いくら個人使用だからと抵抗するも、一度ネット上に流出すれば手がつけられないほど拡散してしまいます。責任を取れと訴えても、もはやその流出元の所在すら不明であれば不可能でしょう。
今回の『哲学の木』の犠牲は、今の世の中の不条理全てを物語っています。
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