今やストックフォト業界で何か新しい事をやろうとしても、アマチュアものも含めてこれだけ素材画像や動画が溢れ返っていてはかつての様に気軽に利益を上げるのは至難の業というところまで来ました。私などもRM時代からRF(売り切りロイヤリティフリー)へと時代の要求が激変する中、如何に売れる素材を世に送り出せるかが運命の別れ道といいますか、その重い課題は増々その精度や狙い目が外せない、まるで金縛りのように絶えず襲ってきています。
広告制作者もまたクライアントの厳しい要件を超えた納得の提案をクリアする為に斬新で新鮮且つ効果的な素材をより以上に探し求めているに違いなく、私たち素材屋について言えばこれまでをなぞっただけのありふれた製品にはもはや目もくれないでしょうし、その内容はマイクロストックと常に比較されるので少なくとも内容はともかく質の高さは当然必須条件であり、それ以前に比べ大きなウェイトを占める事はもはや言う迄もありません。
さてそれではストック素材の担い手は今後如何にして質の高い製品を生み出せば良いのでしょうか。新たなジャンルへの移行や選定も重要かとは思いますが、やりたくとも現実的に出来ないテーマを選んでもしょうがありませんから、自分が今直ぐ出来て準備し得る環境の中で何をするか、いつ何処へ行くか、そのテーマの狙いと表現はどうするのか、その為に新たな機材は必要かを改めて考え、まずはそこにエネルギーを使う事が大切かと考えます。
ここ10年余りの撮影機材の進歩には目覚ましいものがあります。直近でいうならばまずあのドローンが上げられますが、もしかしたらマイクロストックで復業されている方の中にも既にドローンを購入して上空からお目当ての被写体を捉えているかも知れません。価格も欲を出さなければ今なら10万円前後で一応の基本セットを手に入れる事が出来ますし、一人で操縦と撮影を容易にコントロール出来るようにもなりました。ジンバル(不本意な傾きやブレを抑える機器)も初めから組み込まれているドローンも多く、やる気さえあれば直ぐにでも始められます。
フェイスブックにも結構年配の写真家の方々が頻繁にドローン映像をアップするぐらいなので、相当にポピュラー化してると思われます。という事はドローン素材の命もそう永くはないかも知れません。国や各自治体の規制も案の定厳しくなりつつあるので出始めの頃のように何処でも自由気ままにに飛ばせるとは限りません。既に建物の近くや全国の公園と称する地域内では一切飛行させる事が出来なくなりました。
そういう意味で被写体が極めて限定される事は、特別な許可を得る必要からテレビ局関連、不動産や地質調査などの請負業がもっぱらの主流となり免許取得や講習更新手続き、保険加入なども含め定期的で煩雑な手続きも加われば、ストックフォトカメラマンは近い将来お払い箱(追い出される羽目)になる可能性もあります。

つい最近ソニーから2種類の超スロー撮影を可能にしたお手頃なカメラが登場したのですがご存知でしょうか。レンズ交換は出来ないまでも見た目一眼レフ風筐体のRX10IIとファインダーレスコンパクト機RX100IVです。こちらは両機共に何とフルハイビジョンサイズ収録にも関わらず960fpsという通常放送用送信フレーム30fpsの何と6倍を誇ります。すなわち一般撮影速度の6分の1という超スローモーションで記録出来るという訳です。数年前だったら一部の特殊なプロの分野のみに提供されていた数百万もする高額な機材でしたから、民生用としての登場に自身度肝を抜かれた格好です。
その性能といったらプロもうならせる解像感と取り回しの良さはむしろこれまでのプロ機材を上回るものです。価格は前者が12万円、後者が10万円で、ストックカメラマンに於いては問題なく購入可能圏内の撮影機材であり、撮影テーマは今のところは無限にあると思われます。動植物、人物全般、乗り物や自然現象等々上げれば切りがありません。
ただし我々素材屋は上述通り『売れる』が最大の目的な訳ですから、ここはしっかりじっくり思案を巡らすところからスタートすべきです。
ここまで書いて言うのもなんですが、ひとつ大きな問題に気づきました。
あくまで私の場合ですが、動画の売り上げは静止画のそれと比べれば今預け入れしている数量の少なさもあって高々30〜50分の1程度です。このカメラで捉えたスローの動画素材がガンガン売れてギャランティが一気に増える確率は大手代理店の今の市場動向から検証する限りまだまだ難しいのが現状ではないでしょうか。みなさん!冷静且つ慎重な予算配分を心がけていきましょう。
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