人はこれを『危機感のやむ無いキャンペーン』と呼ぶ

キヤノンEOS R



ミラーレス機の幕開け?>
先月の9月26日〜29日の4日間ドイツ・ケルンのケルンメッセで開催されたフォトキナ2018で毎年注目を浴びるお馴染み世界最強と謳われて久しい日本のカメラメーカーですが、ニコンとキヤノン2社が今回特に力を入れたのが直前で正式発表したミラーレス一眼のお披露目だったでしょうか。

数ある従来の既存レンズも併用可能な中間アダプターとともにその有用性を大々的にアピールし歴史ある両社の開発力を存分に見せつけた形に一見して取れましたが、実は国内同ライバル会社で過去にミノルタを買収しあのウォークマンの生みの親でもある映像技術の大御所(電気屋の老舗)ソニーが繰り出す常に先を行く冴えあるテクノロジーに絶えず翻弄される2社であり、裏を返せば将来への不安と焦りから来るであろう危機感も合わせてそこに垣間見えたように感じられました。

多くの写真家が各々事あるごと手持ちのSNSメディアを介して両機のそのマイナス面を事細かに吐露している言葉からもその分野での今更感的な出遅れは致命的とさえ解釈されます。つまりスペックそのものがソニーをはじめ他のその先進性に注力して開発を進めてきた先発組の足元にも及んでいない事実が挙げられます。

詳細は敢えてここでは語りませんが、その辺の最新情報や知識のある方でしたら既にご自身で検証されている事でしょうしそれでもなおそのメーカーへの想い入れからこの両社ミラーレス機の購入を検討されている方も多くおられる筈なので大っぴらな批判は避けたいと思う訳です。

正直私自身も相当以前からのニコン党なのでその格式や伝統、これまで輩出されてきた歴史的存在感を放って止まない著名写真家たちの社会的貢献度を思うに高々カメラの性能が後追いの言われだけで単純に判断は出来ないでしょう。仮に世間の大半から時代遅れで今ひとつと酷評されたにせよ、実際に手に取ってみて撮影してみれば十分満足できるレベルであり別の同社製カメラと比べれば数段その機能や取り回しは向上していると思われます。

しばらく前にこのブログで私は「プロ用カメラもいずれは小さくなっていく」と断言した記事を書いた覚えがありますが、プロの現場がまさしくその流れに沿ったサイズ感になってきたと最近つくづくそう思えてなりません。映画やドラマ撮影でも小型SLR機に大振りなシネレンズを装着しリグを介して制作するメイキングも多くなりました。スタビライザーでの手持ち移動や俯瞰もそうですが舐めるように狭い隙間をかい潜るドローン撮影など小型カメラの活躍はもうとっくに当たり前になったと認識する今日この頃です。


まるで富裕層頼み一択>
ところがその反面、より多く売れてほしい民間市場はというと実は閑古鳥が鳴いているのが実情ではないでしょうか。今や次から次へと登場する新型新製品が目白押しで何が自分に良くて駄目なのかの判断を鈍らせます。「今度はいいのが出た」と思いきや半年もしない間に別メーカーから驚きのスペックが発表されて仰天なんて事はもはや日常茶飯事です。大枚をはたいて購入した直後にそんな不遇の目に合えばその後の撮影にも力が入らず一時の愛着さえどこかへ逝ってしまいそうです。

ここしばらくカメラの価格がかなりの高額寄りを示していますが実感されていますか?『私の時代は』などと言えば物価が違うのだから今更どうでもいい話に成り兼ねませんが、しかし20年ほど以前のあの頃ニコンの最高級機でさえ10万円台で買えたと思いますしレンズだって10万円超えるものは極めて開放値の明るいごく少数タイプで安月給の私でさえ十分購入可能な範囲が維持されていました。

ところが今やカメラは初心者導入タイプを除いて大方中級機でさえ軽く20万円超えが主流でレンズもセット設定された廉価版ズーム以外は単品購入タイプでほぼカメラのその同額にも匹敵するほど高額です。「ちょこっと暇つぶしに写真でもやってみっか」というお気軽価格では済まなくなっているのが事実でしょう。今回2社が発売した新生ミラーレス機は概ね50万円近くにも成り同時発表され且つ今後のレンズ開発のロードマップを見る限りあまりに途方もないその予想される高額設定に流石に目がくらみました。

※ソニーα然りライカ全般、フジのGFX、各社コンデジの多くに画素数も相まってか異様な高額設定が確認できます。

更に驚く事にそんなレンズ群の殆どが標準もしくは広角系の単焦点で個人的には興味を抱く理由がないのです。これをそれこそ一般の写真趣味人がプロ並みに上手く使いこなせるとは到底思えないというのが実感です。これも以前お話しした事ですが、やはりズームは重宝します。広角〜標準系ズームを1本と準標準〜中望遠(200〜300ミリ程度)系ズームを1本の計2本あれば大抵の被写体はこなせます。出来る限り鮮明で明るくそれでもって価格を抑えられる事が望ましい訳ですが、そんな実際に価値あるレンズの発表はここ最近は鳴りを潜めている状態が続いています。

これは他の国内老舗及び外資系新興レンズ専門メーカーにも言えます。何故にそこまで単焦点に拘るのか、各メーカー向け個々の電子回路を内蔵するも中には高級故のマニュアルフォーカスなんぞを堂々とアピールしているメーカーもあります。勿論驚愕の高価格設定でした。一部お金持ちのレンズオタクか?さてこんな特殊なレンズをどこの誰が購入するのか全く理解不能です。大いなる需要はまず望めません。


窮状を自ら暴露?>
今日のタイトル『危機感のやむ無いキャンペーン』ですが、本日もネットで驚くキャンペーンを目にしました。それこそ猫も杓子もキャッシュバック・キックバックキャンペーンの応酬だらけという具合でこれはきっとこのカメラ業界だけでは無いと思いますし年末に向けての掘り起こしもあるでしょうが、結構なメーカーがあたかも予め口裏合わせをしたかのようにこのサービスが一斉に始まっています。

驚くのは今回EOS Rを発売したキヤノンです。一般的には販売台数が一段落して需要の低迷期にテコ入れ促進を目的に行う事が多い訳ですが、何と新製品発売と同時というのが異常さを醸しています。また付随して販売する併用アダプターリングなどは価格¥12,500に対してキャッシュバックが¥10,000とありこれなどはあまりに信じがたいタダ配りの様相を呈しています。

もう何が何だか予想がつかないほどのスタートダッシュに各メーカーの思惑がやや透けて見える気もしますが、それはまさに『危機感』の表れと私は思っています。繰り返しになりますが、つまりはカメラが売れなくなったと言う証なのです。だからこそ購買力旺盛な富裕層狙いにシフトせざるを得ず高額設定に向く。何としても購買に繋げたい思惑が投げ売り同然のこの破天荒さを促したのだと思います。高額品については散財に余裕のある一部の同じユーザーが何度も購入しているのが実態ではないでしょうか。売り方として選挙と同様に下々を犠牲に大口票を持つ大企業の意向に偏る今の政治がそれを物語ります。

当面の開発費に加え抱える多くの従業員の生活を守らねばならない中でどうにもこうにも今の時代は物が有り余るそれも似た商品が氾濫するコモディティー化に陥っている状況であり、どうすれば世の消費者の興味をより多くこちら側へと惹かせるかが企業にとって直面する切羽詰まった命題、事業に於ける存亡の危機といっても決して過言ではないでしょう。


失われつつある暮らしの豊かさ>
我が国も戦後色々ありましたが、70年代に急成長が促進され80年代にはバブルを謳歌しその後お金の流れが停滞するや否や失われた20年いや既に30年近くにもなります。来年10月にはいよいよ消費税が10%になる事が明らかになり、そこは益々の厳しさを増す市況が予測されます。このまま進めば格差是正は頭打ちとなり全体の10%にも満たない僅かな富裕層のみの財力でこの日本の成長をしっかり牽引出来るのか甚だ疑問です。

前回も言いましたが、民間企業にすればモノが売れなければ生産を控え出費は尽く抑えていきますし少しの幹部級技術者を除いてかなりのリストラなど敢行せざるを得ず、縮小に縮小を重ねた果てに遂にはその業界が完全消滅してしまう運命すらも想像します。どこもかしこもモノが売れない現実、合わせて食の安全維持もそうです。偽りのその場凌ぎの見せかけ商品が巷に並び、日本人に取って代わって低賃金で雇われる外国人労働者がイラついて作ったそんな得体の知れない安物を私たちは手に取りまた口に運ぶ。

今のカメラメーカーが抱える焦りの危機感はそのまま日本の不幸な未来までも映し出しているかのようです。

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