世間は価値観麻痺の状態では

簡易アート

前回書きました国内資本ストックフォト業界の危機ですが、マイクロストックの躍進と浸透はプロ意識に欠ける(確かにプロではない)アマチュア参入が大きな低迷の原因だろうと。まあざっくりそう決めつけてもまた疲弊した国内需要にもよる訳でその他もろもろ原因は上げられるとして、いずれにしても今日のこの状況はどの業界でも起こりうる辛辣な価格破壊のように思えてなりません。

普通に考えて仮に1万円の商品があったとしましょう。それが時間を経るうちにある程度値下がりする事はあっても高々半値が相場です。つまり儲からないと思えばそんな古い不人気商品は鳴りを潜めていつの間にか市場から一切姿が消えているものです。

ところがストックフォトもそうですが、これが商品としていつまでもショーケースに乗っていて登場から数年かけてこれでもかと使われ尽くしても尚、売れるものは辛うじてそのまま売り場の棚に居座り続けたとはいえ売値が10分の1、いや50分に1になっても誰かが必要に応じ買ってくれる事は其れなりにあります。まあ大変ありがたい事なのですが、これが最初からそんな最低価格からスタートされてはと私はマイクロが市場を席巻する以前の当初からそう思っていて「これはえらいこっちゃ」でした。

まさかプロのデザイン現場で使うようになるとは当時は考えもしていなかったであろうと思いますが、こう景気低迷が続けば当たり前にそう成らざるを得ない。使っている側でもクライアント(広告受注先)との間で同じ事が起こっていてその下請けなんかはさぞブラックではないか、きっと今の私的な厳しい状況で働いているクリエーターは五万といます。

問題はそもそも価値観の喪失をもたらしているこの社会全体にあるのではないかとふとそう思いました。最上段の画像は私がこのブログ執筆直前にものの数分で描き起こした、所謂適当な落書きとも言えますがこれが超有名な画家が描いて以下のような豪華な額装で見せられたとしたらどうでしょうか。

簡易アート額装
フレーム名称:デッサン額縁 寸五入山(自社工房の額縁専門店ないとう)
販売サイト:http://www.framming-adviser-naito.co.jp/


画廊主がすかさず寄ってきて「お目が高いですね、こちらは新進気鋭の今はまだ無名の画家が描いた秀作です。この絵はきっと後にいい財産になると思いますが特別お安くしておきます。60万円で如何でしょうか。」と。「そんなにするの?黒地にフリーハンドで引いた赤線一本で?」そう言ってまずはたじろぐに違いありませんが、「強い線でしょう」とまくしたてる画廊店主。「そこなんですね。黒い空間との絶妙な位置とバランス、さり気ない情熱がふつふつと感じられるいい絵です。」意味不明に納得する客。

「もし今ご購入いただければ50丁度で結構ですが」「え!いいの?」ってなもんです。どうですかこのバカな小芝居は。現実的にはそう簡単にコトが運ぶとは到底思えない訳ですが、私が言いたいのは『価値は売り手が決められる』って事なんです。だから究極に安くしてもいいと言っている訳ではありません、むしろ逆で価値を引き上げていくべきなんです。

日頃広告専門の雑誌をよく読んでいる中で、請負のイラストレーターさんが描いたある企業キャンペーンの絵を見ていると実にそれが胆略的といいますか、短時間でささっと書き上げたようなタッチで「これ幾らで請け負ったんだろう」と、疑問符が立ちました。大方広告代理店を通して依頼されたのでしょうから中を取られたとしてそれでも作家の取り分は数十万円はくだらないでしょう。勿論大きい仕事ですから。

しかしこれがマイクロストックに預け入れしている兎に角は其れなりに描けそうな趣味レベルの人に頼んだとしたらどうでしょうか。「すいませんこれ書いてもらって幾らかかりますか?」唐突に「えーと1万円は高いですか?」と来るのではないか。依頼者は「はあ?」でしょうねきっと。つまりプロの仕事が全然分かってないって事なんです。

だから1点売れて25円でも500円でも喜べるんじゃないか。正直アマチュアのストックフォト参入は業者のいい道具にされているばかりか、もはやプロの威厳が失墜するに至るところまでその侵食は進んでいます。もしも上記のイラストレーターの入れ替えでこれ良しと1万円作家がはびこればはびこるほどこの商売は駆逐の一途を辿るに違いなく、夢を描いてその分野を志す専門学生の前途は多難でしょうし、技能者として得られるべき基本的な就労条件が見合わず人材不足の懸念は益々膨らんで結果国内需要(GDP)の底上げ目標2%など到底有り得ません。

デフレ脱却もままならず失業者やブラック企業は底知れず増えていく過程においてその関連から若年層の鬱や自殺者の急増も懸念されます。なにせ下々にお金が回らない訳なので今の日銀体制下で幾ら金融対策をかけても実際にお金が動くのは富裕層間ばかりで殆ど意味がありません。

まずは失墜したモノの価値の復権が最優先であり国民一人一人が価値あるモノにしっかり其れ相応の金額を払いそこから上乗せする形でしっかり利益を出していく、イノベーション創出とはまさにその過程があって言える事ではないでしょうか。年金制度も不安定でいつどうなるか分からないとか、医療保険もそうです。若い皆さんは老後の事考えていますか?実は考えなくていいんです。モノの授受に関わる対価の価値を理解していればお金は潤沢に回ります。だから殆どの場合その積立はきちんと存続し続けて将来に余裕を持って十分備える事ができる。

安く売っても買えても結局は誰も得しないんです。価値について一旦立ち止まって今一度考えましょう。


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